認知症の治療は進化している

お読みいただき、ありがとうございます。風の整体院 岩田です。認知症に対する喜ばしい効果は、「ユマニチュード」のようなケアの方法だけでなく、認知症の治療法や、認知力の低下を抑える方法に対しても次々と発見され、日本、そして、世界各国から報告されています。イギリスでは、心筋梗塞や虚血性心疾患を減らすために大々的にとられた政策で、副次的に認知症をかなりおさえたというデータが発表されました。イギリスの高齢者7500人を対象にした調査で、増える一方と思われていた認知症患者数が、1990年代と比べ2010年代では、明らかに減少したのです。その原因を調べたところ、イギリスが国家政策として行った心筋梗塞や虚血性心疾患などの心臓病を減らす対策が、脳にも良い影響を及ぼしたことがわかったのです。以前は一度なってしまったらもう回復はしないと考えられていた認知症を、そもそも抑えることができる、また、発症したとしても、あるところで、急激な認知力低下を抑え、できるだけゆるやかにすることができるであろうことを確信できるようになったのです。また日本では、2014年、兵庫県淡路島で行われた調査から、「シロスタゾール」という動脈硬化の再発を防ぐ薬がアルツハイマー病の進行を抑えることがわかりました。アルツハイマー型認知症の方の中で、進行が止まっている、また進行が遅い人がいることがわかり、その人たちを調べてみると、みな動脈硬化の再発を防ぐために、この薬を服用しているという共通点が見つかりました。この薬は、血液をさらさらにし、血液の塊が血管の中に詰まらないようにするものですが、アルツハイマー病の原因となるアミロイドベータを減少させる働きがあることがわかったのです。また、ワシントン大学では、アルツハイマー病の場合、脳が糖をエネルギーとして取り込むことができない、すなわち、糖尿病の症状が脳に起きていることをつきとめました。そして、糖尿病で使われるインスリンを、鼻腔からスプレーで噴射し、直接脳に送り込む実験を行ったところ、認知機能の低下が抑えられることがわかりました。このように、新薬ではなく、既存の薬が認知症に効果をもたらすことがわかったのです。新薬であれば、開発までに15年から20年はかかるのですが、既存薬であれば、5年ほどで、認知症の薬として使えるようになると考えられます。こうしている今でも世界各国でさまざまな実験が行われ、次々と報告がされています。そう遠くはない将来、認知症の治療、そして予防が可能になるところまで来ているのです。